遅れている職場復帰の支援体制

事業所におけるうつなどの精神疾患による休職者数の増加が近年では大きな問題となっています。

社会経済生産性本部が2008 年に行った調査では、「心の病」が「増加傾向にある」と回答した企業が56.1%あったそうです。これは、同本部が2006年度に調査した結果の61.5%からは減少したものの、依然として50%を超える高い割合となっています。

このような状況の中で、メンタルヘルスケアに取り組む企業が増えています。厚生労働省が平成19年に実施した「労働者健康状況結果調査の概要」によれば、メンタルヘルスケア、心の健康対策に取り組んでいる事業所は、33.6%で、事業規模で見ると1,000 人以上の事業場では9 割を超えているそうです。また、100人以上の規模の事業所では、6 割を超えています。

しかし、その内容は、「労働者からの相談体制整備」(59.3%)、「労働者への教育研修・情報提供」(49.3%)、「管理監督者への教育研修・情報提供」(34.5%)が中心であって、「職場復帰」への体制づくりは、まだまだこれからという事業所が多いことがわかっています。

今後は心の健康問題により休業した労働者の、職場復帰の支援体制が重要な課題であるといえます。多くの事業所の就業規則では、休職期間中に傷病が治癒すれば復職となり、治癒せずに休職期間が満了すれば自然退職、または解雇すると定められています。しかし精神疾患の場合には完治での復職とは限らず、また復職可能な段階に至った場合でも、復職後すぐに従前どおりの業務に従事させれば、すぐに症状が悪化する可能性も大きいわけです。

こういった点から、企業としては復職判断の際に、当初は軽度の業務につけることによる復職の可能性と現実的な配置の可能性を検討したり、その期間の賃金の支払いについても規定の整備などを進める必要があります。