喪失体験を乗り越える

配偶者や家族など、大切な人を亡くしてしまうという悲しい体験は、私たちが生きていく上で避けて通ることはできません。通常は、喪失後のショック状態、故人の事が頭から離れ難い時期を経て、喪失後の新しい環境に適応していくものですが、その過程で問題が生じ、うつ病など心の病気が生じる場合があります。

喪失体験から完全に回復するには半年〜1年はかかりますが、日常生活は1〜2ヶ月後には日常生活は機能し始めるのが普通です。しかし、2ヶ月以上も日常生活が機能しない状態が続く時や、その人が生きていると固く信じ込んでいたり、 自分も同じ原因でまもなく死ぬと信じていたり、死にたい気持ちが生じる場合は要注意です。

その人の死が思いがけ無い事で心の準備が全く出来ていない時、その人の亡くなられた状況がショッキングなものであった時、また、故人との関係が心の拠り所になっている場合などは、特に心の病気が生じるリスクが高くなります。

喪失体験を乗り越えるには、現実を受け入れることが出発点となります。まず、相手と別れたことを受け入れ、等身大で見つめ直すこと、また罪悪感を持つことも多いので客観的に現実を見つめ直すことが大切です。

そして、辛さや怒りといった自分の正直な感情を表に出して、心に葛藤が残らないようにする事が重要です。日本人は欧米人に比べて、喪失体験直後に激しく感情を表わし悲しむことが少ないため、回復に長く時間がかかるとも言われています。悲しみを回りの人に打ち明けることも、日本人には大切なことです。

また、できるだけ一人にならず、他人とコンタクトをとって孤立感を感じることを少なくすることも必要です。身近に自分を支えてくれる人がいれば、喪失体験から回復するのに大きな力になってくれるでしょう。

どうしても悲しみから抜け出せない時には、ためらわずに精神科や心療内科を受診し、治療することが必要です。喪失体験から抜け出せないままにしていると、対人関係が悪化し、さらに喪失体験を深めるという悪循環に陥ることもあります。