薬物依存症

特定の薬物に対する依存が強固になった結果、その薬物の使用を自分でコントロールできなくなってしまうのが薬物依存症です。法律で禁じられている麻薬や、過剰な睡眠薬だけでなく、日常的な息抜きに用いられるニコチン、アルコール、カフェインなどへの過剰な依存も薬物依存症として扱われます。

薬物依存症の症状は、精神依存と身体依存の2つに分けられます。

精神依存とは、心理的に原因薬物を激しく渇望する状態です。原因薬物が手許にない場合、その薬物に関する思考が意識の中心を占め始めます。重度になるとその薬物に関する思考(使用時の快感度への思い)などによって、日常的に意識が乗っ取られたような状態になります。

身体依存とは、その原因薬物のために生じる体内の生理機能の変化のことです。以前より多く摂取しないと、以前と同じ効果が得られなくなる耐性ができます。そして、その薬物の摂取を中断したときに、不快な症状が出現します。原因薬物によって症状の出方に差異があります。

薬物依存になる原因の一つは、脳の神経科学的機能の変化です。薬物依存症は心や性格というより、脳の病気と見ることができます。報酬や快感を得ると、脳内の神経伝達物質であるドーパミンなどが活性化しますが、薬物依存症になるとドーパミンなどが関連する脳内部位に何らかの病的変化が生じてしまうといわれています。

そして、気持ちの慢性的な落ち込みや、 不安定な人間関係などの心的要因、生活環境、日常のストレスといったさまざまな要因が相互作用し、薬物への依存が進行した結果、治療が必要な薬物依存症に至ります。もともとうつ病などの心の病気があり、不安定な心を癒す手段として薬物を求めてしまうことも多いです。

薬物依存症では、自力でその状態から抜け出すことは非常に困難であり、回復するためには適切な治療を受けることが不可欠になります。